labyrinthus imaginationis

想像力ノ迷宮ヘヨウコソ…。池田真治のブログです。日々の研究のよどみ、そこに浮かぶ泡沫を垂れ流し。

ライプニッツ『モナドロジー』§6

1. 原文

したがって、モナドは一挙にしか始まることも終わることもできない、と言うことができる。すなわち、モナドは創造によってしか始まることができず、絶滅によってしか終わることができない。それに対して、複合されたものは、部分ごとに始まったり終わったりする。

Ainsi on peut dire que les Monades ne sçauroient commencer, ni finir, que tout d'un coup. c'est à dire, elles ne sçauroient commencer que par création et finir que par annihilation ; au lieu, que ce qui est composé, commence ou finit par parties.


2. 注目

モナドは、神によって、一挙に創造されることでその現実存在が始まるか、あるいは、一挙に絶滅することでその現実存在を終えるか、いずれかでしかありえない。
・自然的「消滅」と奇跡的「絶滅」の違い。
・他方で、複合体は、その部分を持ち、部分に関する入れ替えがありうるので、その意味で、始まったり終わったりする。


3. 解釈
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4. 比較参照

* PNG, §2. モナドは、部分を持たず、形成されることも解体されることもありえない。それらは、自然的に始まることも終わることもありえない。
* SN, §2. われわれの精神と同じように、これらの形相や魂が不可分であることを私は見る。このことが、動物の魂に関するトマスの意見であることを、私は覚えている。しかしこの真理は、魂と形相の起源と持続についての大いなる困難を復活させた。というのも、真の一性を持つすべての実体は、奇跡によってのみ始まったり終わったりしうるので、魂は創造によってのみ始まり、絶滅によってのみ終わりうるのであるから。


5. レッシャーのコメンタリー

* ライプニッツは彼の単純実体を時間の全幅を通じて世界のうちに連続的に現実存在するものとして考えている。
* それら単純実体は、一挙に、一つの全体としての宇宙の創造とともに生じうるのであって、また、そのような物理的存在の終わりとともに、一挙にのみ、現実存在をやめることができる。
* こうしてすべてのモナドは、互いに同時に存在するものであり、また全宇宙と同時に存在するものである。
* 古代人たちの唱えた原子のように、諸モナドの歴史は世界の歴史と共外延的である。それらは自然の全体と共永遠的である。誕生と死は、それらモナドの経歴において、いかなる役割も演じない。


6. 河野与一の注解

* 『叙説』§9の比較参照を指示。【そこで、「また、実体は創造によってしか始まることができず、絶滅によってしか滅びない」と述べている箇所が該当しよう。】


7. 工作舎ライプニッツ著作集

* 複合されたものは、物体で、部分を持つ。
* 生物の成長を例にあげ、個々のものが、同一性を保ちながら部分をよそから取り入れたり、捨て去ったりしていることが、ライプニッツの念頭にあることを示唆している。
* 『モナドジー』§71の参照を指示。


8. 池田善昭の注解

* 自然的なものに関わる「消滅」(périr)と、モナドに関わる「絶滅」(annihilation)の違いを指摘している。ライプニッツは、これらをはっきり使い分けている。【モナドは神の創造あるいは絶滅によって一挙に始まるか終わるかしかないのだから、信仰によってそのモナドが滅びたりするというような解釈は、成り立たないように思われる。他のテクストに、根拠があるのだろうか。】


9. 参考文献
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・トマスにおいて、理性的動物たる人間の魂が、その身体の死とは別に存続しうるものであり、不可滅(incorruptibilis)であると論じられていることについては、以下を参照。
8. Body and Soul in McInerny, Ralph and O'Callaghan, John, "Saint Thomas Aquinas", The Stanford Encyclopedia of Philosophy (Winter 2010 Edition), Edward N. Zalta (ed.), URL = http://plato.stanford.edu/archives/win2010/entries/aquinas/.
Article 6. Whether the human soul is incorruptible? of Summa Theologica Iª q. 75 a. 6 co. Latin original text