labyrinthus imaginationis

想像力ノ迷宮ヘヨウコソ…。池田真治のブログです。日々の研究のよどみ、そこに浮かぶ泡沫を垂れ流し。

【錬金術】

ALCHEMY(CHEMIA).

ライプニッツは若い頃、17世紀中葉に自然哲学に従事していたものの常として、錬金術に興味を持った。1666‐1667年頃、彼はニュルンベルク錬金術協会に雇われて、金を作成する計画に実際加わっていた。
しかし、錬金術はよりいっそう疑似科学とみなされるようになっていたので、ライプニッツは、後期には、錬金術的考えへの信頼を遠ざけるようになり、初期の頃の錬金術の研究への従事をもみ消そうとしたり、否定するようにさえなった。
それでも、後期ライプニッツ形而上学の多くの局面において、錬金術的思想のテイストを残しているところがあることは議論の余地がある。たとえば、創造された宇宙の内にあるすべてのものは、他のすべてのものに根本的に類比しており、質料のほかに魂をも持ち、あるヒエラルキーないし存在の連鎖の部分であり、根本的変質transformationをすることができる、という考えは、錬金術的な思想である。
後期ライプニッツは、基盤となる金属の金への変質という想定を、悪い意味で奇蹟的であるとして、退けるようになったようである。しかし、(良い意味での)奇蹟的な変質は、人類の起源と宿命に関する彼の見解にとって重要であり続けた。
ライプニッツの説明によれば、理性的魂は、動物の魂の変質であるところの、超越創造という神的プロセスによって生じたものである。後生についての彼の見解もまた、元は錬金術から引きだされた考えに影響を受けている。たとえば、あらゆるものは精神的な本質ないし「実体の花」に還元できるとする錬金術的考えは、ヨハン・フリードリヒ公(Johann Friedrich)のために書かれた長めの摘要において与えられた、再生の可能性についての初期思想の形成において鍵となる部分を演じた。
錬金術的な用語はより慎重であった後期の説明においては落とされたが、ライプニッツはあらゆる事物に「種子の原理」が存在すると信じ続けた。その原理は、自然的に破壊されえないものだが、あらゆる事物が根本的変質を受けるということを維持し認めるものである。そして彼は、自然的世界におけるこれら変質が、人間が死後に神秘的に被るところの変質に類比的であると信じ続けた。