labyrinthus imaginationis

想像力ノ迷宮ヘヨウコソ…。池田真治のブログです。日々の研究のよどみ、そこに浮かぶ泡沫を垂れ流し。

【絶対的必然】

Absolute Necessity (NECESSITAS ABSOLUTA/NÉCESSITÉ ABSOLUE)

・ある結果が「絶対的必然である」とは、その反対が論理的に不可能である場合を言う。
形而上学的―、幾何学的ー、あるがままの[brute]―、という言い方もする。
・論理学的・数学的真理、および宿命論に含まれる種のものについて言われる。
・「仮定的必然」と区別される。
ライプニッツの内属原理(inesse principle)にしたがえば、ユダがキリストを裏切ることは、ユダの完全概念の部分である。アントワーヌ・アルノー(Antoine Arnauld)が考えたように、(他の可能世界のユダと区別される)このユダが、キリストに背くことは、絶対的必然であるかのように思える。そして、もしこれが正しいとしたら、非難されるべきは、ユダにこの悪い行いをさせた、神ということになる。
 これに対して、ライプニッツの考えはこうである。ライプニッツは、ユダが自由によってキリストを裏切ることは、ユダの完全概念の部分であることを認める。しかし、ユダはそれを行わないことも可能であったとする。ライプニッツは、神がこの(キリストを裏切る)ユダを創造したことを認める、したがってまた、ユダによって為された悪に神が同意していることを認める。というのも、為された悪にもかかわらず、最善である可能世界から善を引きだすことができることを神は知っているからである。
 この意味で、ユダがキリストを裏切ることは、「仮定的必然」である。というのも、そのことは、神が最善の世界を創造することを選択した、という仮定に随っているからである。そして、神による選択の働きは、ユダがキリストを裏切ることの不可欠な部分を形成している。しかし、そのことは、悪がなされることの絶対的必然ではなかった。ライプニッツにしたがえば、神が最善の世界を創造することも絶対的必然ではなかった。
参考文献:『アルノー宛書簡』ほか。