labyrinthus imaginationis

想像力ノ迷宮ヘヨウコソ…。池田真治のブログです。日々の研究のよどみ、そこに浮かぶ泡沫を垂れ流し。

研究関連文献紹介。

David Rabouin, Mathesis Universalis : L'id'ee de "Math'ematique universelle" d'Aristote `a Descartes, PUF, Paris, 2009 (405p).
ダヴィド・ラブーアン、『マテーシス・ウニウェルサーリス:アリストテレスからデカルトまでの「普遍数学」の理念』〕

二部構成で、章立ては以下の通り。

序論
哲学的問題としての「普遍数学」の構成
I. アリストテレス
II. 「普遍数学」と数学的理論:アリストテレスユークリッド、『エピノミス』
III. 新プラトン主義の頃
順序と尺度の学に向けて
序論
IV. 普遍数学の再生
V. デカルトのmathesis universalis
結論
補論I. 「共通数学についての探究」(La quaestio de scientia mathematica communi)
補論II. デカルトライプニッツにおけるmathesis universalisに関する書誌学的試論
参考文献
人名一覧

パラパラと眺めた印象だけ伝える。
主に扱われるのは、ご覧のように、プラトンアリストテレスユークリッド、プロクロス、デカルトである。そして本書では本格的に扱われないが、背景としてその延長にあるライプニッツがいる。ライプニッツボルツァーノフッサールまでの「普遍数学」の系譜学は、続刊ということになりそうだ。しかし、それにしても、壮大すぎる。

専門外のところは触れないが、ライプニッツに関して言えば、ライプニッツの「想像力の論理学Logica imaginationis」としての普遍数学の理念が、プロクロスにまで遡れることを論じていることは、一つの成果であろう。

哲学的問題として普遍数学を捉えた場合、どのようなことが論じられるのか、その一つの焦点は「想像力」をどう考えるかにある。tところで、本書には数式や図形がまったくといっていいほど現れない。数式等は削れという出版の事情なのか、あるいは著者の方針なのかは知らない。たしかに一般的に読みやすくはなるかもしれないが、数学的具体例なしに、どこまで著者がこれまで強調してきた数学における想像力の意義を論じることができるのか、自分としては疑問である。それならそれとして、想像力の分析を徹底してやっているわけでも、想像力が主題的に扱われている箇所の分量を見た限りでは、なさそうである。扱っている領域が領域だけに、そこまで踏み込んで論じているわけではないだろう。あるいは読み手に、それこそ想像力を想定しているのかもしれない。

序文に、このような包括的な主題を論じた理由が述べられている。普遍数学に関しては、個別的分析がかなり進んでいると思われるので、そろそろサンテーズが求められる頃であり、こうした研究は歓迎すべきものである。そのためには、minutieuxなところの分析の多少の犠牲は、むしろやむをえないといったところか。それでも内容はかなり専門的。

以上は単なる印象だけなので、いいかげんである。いずれ、きちんと読んでみた後で書評をしてみたい。もっとも専門外のところなので、細かいところの解釈の如何はわからないだろう。

(オフレコ。読んでみたけど、読みにくいことこの上ないね。あと、扱っている対象がこれだけ魅力的なのに、なんでこんなに読んでいてつまらないんだろう。何がいいたいのか良く分からないところが多い。分析は不透明で、哲学的に洗練されておらず、物好きな人を喜ばせるだけなんじゃないだろうかとさえ思わせる。もっとも、細かい情報はためになるし、テーマを通史的に扱っているのはえらいし、このテーマに関心がある人には、ためにもなることは確か。なんだかひどいことを書いているが、おそらく大変な研究だったろうと思われるし、こういうのを書けと言われてもなかなか書けない、労作である。)