今年はパース没後100年。
授業も、残すところあとそれぞれ一回となった。後学期は、哲学演習はすでに今日で終了。西洋思想史は、「生命・進化・情報」をテーマに科学思想を踏まえてカントの有機体論、ダーウィンの進化論、フロリディの情報学などを概観してきた。哲学講読ではベルクソンの『創造的進化』。初めて哲学書を読む学生には、わりと難解だったかもしれないが、良い訓練になったかと思う。
哲学特殊講義では、ずっと空間論がらみをやってきた。これまでとりあげてきたのは、ライプニッツ-ニュートン論争、アボットの平面世界、カントの空間論、加地『穴と境界』、ブレンターノの境界論など。授業では最後に、伊藤邦武先生の『パースの宇宙論』と、伊藤先生が訳されたパースの『連続性の哲学』を取り上げて、今期の授業はおしまい。学生は(わりと)皆まじめについてきてくれており、感謝している。とりわけ哲学特殊講義では、もっぱら授業後ではあるが、質問をしてくれるので助かっている。
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思えば、この『連続性の哲学』は、私がライプニッツの無限論と「連続体の迷宮」の問題で修論を書いた前後ぐらいにたしか出て、読んで衝撃を受けたのだった。連続体の問題に、自分の哲学的テーマを見いだしたのも、ライプニッツ以上に、パースが原因となっているかもしれない。
というのも、夏のある日、パースの『連続性の哲学』を読んだときの哲学的原体験があるからである。その後、夏風邪をひいたのか、発熱して寝込んだが、その際、私が講壇に立って、パースに連続体について説明するという夢を見た。あたふたと拙い説明を試みたが、パースは「ゼンゼンダメ」とおっしゃった。これは正直、今でもトラウマになっているのだが、これが、この後も哲学を続けることになったであろう、唯一の原体験とも言える。
博士課程でライプニッツの「連続体の迷宮」をテーマに、もっと掘り下げて研究することを決めたの2004年前後だっただろうか。伊藤先生は、私の目をじっと睨むように見て、「大変だよ」とおっしゃったのを、良く覚えている。このテーマの難しさは、トポロジーや超準解析などをあまり数学的基礎がしっかりできていないうちに取り組んで、すでに数学的理解のレベルにおける困難に直面していた私などには、十分手に負える問題ではないだろうことはわかっていた。しかし、それでも諦めきれず、やっぱり、何か根本的に分かりたいことがあり、それがこの連続体の問題だった。断続的にではあるが、連続体の問題に関心を持ち続けられているのも、こうした原体験が原動力となっているのだろう。
そういえば、今年はチャールズ・ソンダース・パース(1839-1914)の没後100年となる。何か、記念的な催しなど、があるのだろうか。たぶんそれもあって、有馬道子『改訂版 パースの思想 記号論と認知言語学』が出るようだ。まだ読んでいないので、これを機会にぜひ読んでみたい。
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