labyrinthus imaginationis

想像力ノ迷宮ヘヨウコソ…。池田真治のブログです。日々の研究のよどみ、そこに浮かぶ泡沫を垂れ流し。

アイケ・ピース『デカルト暗殺』(山内志朗訳)読了。

デカルトが暗殺されたのだということを、著者の祖先に宛てられた、デカルトの死を看取った侍医の一人からの手紙を根拠に、エピソードを交えつつ実証しようとする。この書を読む限り、デカルトが彼を妬みその自由思想を危険視する古典文献学者からヒ素によって毒殺されたという状況証拠はだいぶ揃っているようである。しかし、本書の段階では、肝心の法医学的な検死には至っていない。デカルトの頭蓋骨および遺骨におけるヒ素分析は結局なされたのであろうか。デカルト暗殺が話題になってから、大分時は経っているが。こじつけに近いところもあり、毒殺の可能性は認められるけれども、決定的議論には至っていないという印象です。クリスティーナについてあまり知らなかったのだが、これを読んで少し幻滅してしまった。デカルトは、女王の権威を高めるお飾り要員でしかなく、冷遇にもほどがあります。デカルトもそんな女王の性格を読めておらず、スウェーデン行きという誤った判断を下したのは残念なことです。口は災いの元ですね。それも、宮廷ともなると。デカルトが女王にすらも、忌憚なく意見をズバズバ述べる攻撃的な性格であることは、哲学者たるものかくありなんと思わないこともないです。いわゆる「御用学者」ではまったくないですね。さすが、われらライプニッツィアンのライバル、デカルトであります。哲学とは関係のないこういう歴史的な逸話はこれまでほとんど関心を持っていませんでしたが、さすがにデカルト暗殺ともなると、読まざるをえませんでした。飲み会などでネタがつきたら、これで盛り上がったり、話がふくらんだりするかもしれません。

デカルト暗殺

デカルト暗殺