リシャールのパラドクス
Revue generale des Sciences pures et appliquées, 30.6.1905, No. 12, p. 12
から、粗訳。
数学の原理と集合の問題
――われわれは、リセ・ディジョンの教師、リシャール氏から、次の手紙を拝受した。
1905年3月30日号において、本誌*1は集合の一般的理論において遭遇する、ある矛盾を報じた。
そのような矛盾を見つけるのに、順序数論まで踏み入る必要はない。ここに、連続体の研究に手をつけるやいなや与えられ、他の多くの矛盾がおそらく帰着する、一つの矛盾を提示しよう。
次の考察に基づいて、ある数の集合を定義して、それを集合Eと名付けよう。すなわち、
フランス語のアルファベットのあらゆる配列を、アルファベット順に整列することで、2つずつ書いていこう*2。それから続けて、アルファベット順に整列されたあらゆる配列を3つずつ、続けて4つずつ、などなど、と書いていこう。これらの配列は、同じ文字を何回か繰り返して含むことができる。つまり、反復を伴った配列である。
こうして、任意の整数pに対して、p個ずつ並べられた、アルファベット26文字のあらゆる配列は、この表のうちに見出されることになろう。また、あらゆる事柄は、有限数の単語で書かれるので、書かれることは、われわれがその形成の仕方を指示したこの表のうちに見出されるであろう。
ある数の定義は、いくつかの単語で作られる、そして、単語は文字で作られる。これら文字の配列のうちのいくつかは、数の定義の形をとっていよう。今、われわれの配列から、数の定義の形をとっていないような、すべての配列を排除しよう。
をある配列によって定義された最初の数とする。また、を2番目の数、を3番目の数、など。
こうして、われわれは、ある決定された順序において整列された、有限数の単語の助けで定義されたあらゆる数を持つ。
したがって、有限数の単語の助けで定義されうるあらゆる数は、可算[可付番]なある集合を形成する。こうして、矛盾がどこに存するか、判明する。なぜなら、この集合に属さないような、ある数を形成することができるからである。
今、pを、集合Eのn番目の数の、n番目の小数としよう。次に、整数部分に0を持つもので、n番目の小数pが8とも9とも等しくないならば、その小数としてを持ち、反対のケースでは[すなわち、n番目の小数が8と9に等しいならば]1を持つようなある数を形成しよう*3。このようにして作られる数Nは、集合Eに属さない。というのも、もしその数が集合Eのn番目の数ならば、そのn番目の数字はその数のn番目の小数であり、それ自身ではないことになるからである。
さて、Gをギユメに囲われた文字のグループと名付けよう。数Nは、そのグループGの単語によって定義される。すなわち、有限数の単語によって定義される。したがって、数Nは、集合Eに属さねばならない。ところで、われわれは数NがEに属さないことを見た。これは矛盾である。
次に、この矛盾が見かけのものにすぎないことを示そう。われわれの配列に戻ろう。文字のグル―プGは、これらの配列の一つである。それは、わたしの表のうちに存在するであろう。しかし、それは、表の内に位置を占める代わりに、有意味でない。というのも、そこには、集合Eの問いがあって、その集合Eはまだ定義されていないからである。したがって、わたしはEを排除しなければならない。グループEは、もしEが完全に定義されるならば、有意味でない。そして、Eは、無限数の単語によってしか、それでありえない。したがって、矛盾は存在しない。
さらに、次のことを注意しうる。すなわち、集合Eと数Nの集合は、別の集合を形成する。その第二の集合は、可算である。
数Nは、集合Eのある列kに挿入されうる。kより大きい列の他の数すべてを、一つ列を落とすようにして、このようにして変更された集合を、引き続きEと呼ぼう。さて、単語Gのグループは、Nと異なる数N'を定義するであろう。というのも、数Nは列kを今占めるからであり、N'のk番目の数字は、集合Eのk番目の数のk番目の数字と等しくないからである。
J. リシャール, リセ・ディジョン教師。