labyrinthus imaginationis

想像力ノ迷宮ヘヨウコソ…。池田真治のブログです。日々の研究のよどみ、そこに浮かぶ泡沫を垂れ流し。

パリ滞在記。

9月1日から9月5日まで、パリに行ってきました。

パリ滞在の第一の目的は、今後の方針をはっきりさせるため、指導教官に会って相談すること。
そして、第二の目的は、資料のアクセスが容易で集中できる環境で研究計画を練ること。

パリには出張や会議のためにわりとしょっちゅう来ているので、もうこれといった新鮮さを感じることはなく、むしろ、都会の煩雑さや汚さが好きになれないので、あまり訪れたくない街だと、来る前は思っているものですが、そうした嫌気をふっとばすものがパリにはあり、いざ去ってみるとやはりまた来たいと思っていたのでした。

宿は、学生や研究者がしばしば使うCISP(パリ滞在国際センター)。シャワー付き一泊31€で、ホステルより高いけど、一人部屋で、他の安ホテルと違い、基本静かで落ち着けます。その代わり、パリ的な気分はありません。研究のためということで奮発。

初日は友人と再会して、リュクサンブール公園で事前に買っておいたお酒を飲んで黄昏た後、カルティエ・ラタンで夕食。軽くのつもりがわりとガッツリ食べた。ちょっとだけパリジャンになった気がしました。

2日目〜3日目は、BnF(フランス国立図書館)に終日こもって、研究したり書類書いたり資料散策したり。今回はマイクロフィルムの使い方を覚えた。3日目夜は、若手の社会学者、磯さんと韓国料理屋で会食。ご自身の社会学研究について熱く語ってくださり、とても勉強になりました。柔道や柔術がそもそもなぜフランスで日本以上に流行っているのか、おもしろい話を伺いました。今後の研究に期待です。ぼくはあまり自分の研究をオープンに話すことはないと思うのですが、専門外の人にも魅力的に思われるように語るのは、重要な資質なので、人に話すことでプレゼンの訓練をしたいなと思いました。個人的な関心に基づき自分のためだけに研究していて、テーマを人に共有してもらいたいとあまり思っていないのが根本的問題かもしれません。伝統的な問題を考えているので、自身の研究の重要性は明らかであると思ってしまっているのがそもそもいけない。自分のやっているテーマで哲学的な成果を何か出すには膨大な時間と労力を必要とし、まだまだ哲学の段階ではないので、話したくても話せないところがあるのですが、世間はせっかちで、悠長にそんなのを待ってはくれません。結局、パリ滞在期間中は、もんもんと今後の研究方針ばかりを考えていました。

4日目は、終日オフの予定でしたが、午前に昨日までにする予定だった仕事をこなして、午後からオルセー美術館を見学。第一日曜なのでタダです。でも音声ガイダンスは有料。でも、これがないと絵をまともに見れないので、5€払って借りた。ゴッホの自画像は圧巻。実物やばい。病んでいる自分を精確にみつめる強さを感じた。ミレーは思ってたより絵が小さかった。シニャックの色使いが好きだったので、見れて良かった。ロダンの某博士とか地獄の門を見て、ダンテの『神曲』を読みたくなったり。もう挙げたらきりがありません。じっくり見てたので、全部はとても見きれず。機会はまだあると思うので、また訪れたいと思います。一作品ごと、わりと丁寧に見ていたら、本当に疲れました。でも、楽しかった。その後、美術館からセーヌ側沿いをのんびり歩いてサン・ジェルマンで夕食。途中、雨が降ったのですが、ポンヌフにかかる虹が見え、これがとても美しかった。

最終日は、ソルボンヌで研究計画を練ったり、Vrinというフランスで哲学をやっているものなら知らないものはいない哲学専門書店で、近刊書と古書を漁ってました。たまたま今度発表予定のテーマに関わる本が出てたので、一冊だけ購入。以前来たときにあった、カッシーラーライプニッツ本をこの際買っておこうと思ったけど、売り切れてて残念。古書は出逢ったそのときに買わねばだめです。
その後、パリ出立直前に、師匠とBercyで落ち合うことに成功し、カフェで面談。パリで仕事をするには、フランスの博士号をもっていないことには、ということで、今後の方針を話しあいました。現在までの研究をフランス語でまとめて、早目に博士号をもらうか、迷っています。やるからには本気でやりたいのですが、そのためには生活の問題をクリアしなくてはなりません。主に日本を意識して就職活動を続けつつ、どこらへんまでできるでしょうか。研究もシュウカツも、日本と海外で分散してしまっている気がするので、明確な方針をたてないといけません。師匠の現在の研究についても質問をして、貴重なお話を伺うことができました。師匠とは関心の重なる部分が多いので、自分は数学の哲学の観点から、それを展開できればと思っています。

短い期間でしたが、目的も達成でき、思いがけずそれ以上に充実した時間を過ごせ、貴重な経験をしました。
帰りのTGVで、くるりを聴きつつ、書類の直しをしたり論文読んだり。ビールを少しだけ飲んでいましたけど。
しかし、帰ってきて、TGVの駅からサント・ヴィクトワール山に迎えられたときの安堵感、そして自宅の部屋にふいてくる風のおいしさに、エクスの街がすでに自分の故郷となりつつあることも自覚したのでした。