labyrinthus imaginationis

想像力ノ迷宮ヘヨウコソ…。池田真治のブログです。日々の研究のよどみ、そこに浮かぶ泡沫を垂れ流し。

ラッセルのタイプ理論とゲーデルの哲学

ラッセルのタイプ理論の初期受容に関して,ゲーデルの哲学を考察する.まず,ゲーデルの「ラッセルの数理論理学」(1944)におけるタイプ理論批判の論点を確認する.その論文でゲーデルは,論理に対するラッセルの実在論的態度を受け入れ,その思想的起源をライプニッツの普遍記号学に求めることで,世界を論理的に構成する単純概念が実在すると考えた.そこで次に,その考えが,ゲーデルラッセル批判とどのように関わってくるのかを,ハオ・ワンの著作に見られるゲーデルライプニッツ研究に関する言及を手掛かりに哲学的に考察する.とりわけ現代新たに分かってきたこととして,ラッセル論文と同時期に書かれたゲーデルライプニッツ研究に関する遺稿に言及する.ラッセルのタイプ理論は,「関係」の論理として考案されたものであり,ゲーデルは「概念」のタイプ理論を考察した.遺稿では,概念の問題と共に,関係命題を構成する「文法」の問題に直面していたことが現段階で明らかになっている.そこで,最後に,関係と概念の問題を問う.