postface(4/17)
訳者Pol Boucherは、ライプニッツのDe Conditionibus(「条件論」, A VI-1, 99-15)も2002年に翻訳・注解しています(同Vrinから出版)。いずれもとんでもない労作です。注がえらいことになっております。酒井潔先生の『ライプニッツ』に、『条件論』の簡潔な紹介があります。
…ライプニッツの『条件論』は法学の学士号取得のための研究の一部をなす。哲学的色彩がきわめて強いことが特徴で、法律に条件が付けられる場合を検討している。もし条件が不可能か不確実(偶然的)か必然であるなら、結論として法律は無効か条件付きか絶対的である。ここでライプニッツは無効・不確実・絶対的ということを0・1/2・1と表記している。*1
その実際の典拠がおそらく以下の部分です。引用してみましょう。
114.(256.)それらは互いに次の等しい関係を持つ。すなわち、
無効な法律Jus nullum 条件付き法律Jus Cle 純粋な法律Jus purum
不可能な条件Co impossibilis 不確実incerta 必然necessaria
ゼロcyphra 分数fractio 全体integrumというのも、不可能な法律は無効な法律であり、th. 144、必然的条件は法律を純粋にし、th. 332、不確実な条件は法律を条件付きにするからである、th. 11。ところで条件付き法律は純粋な法律と無効な法律の中間である。それは後者より大であり、前者より小である。すなわち、無と全体のあいだの分数である。*2
まさに3値論理。全体integrumは整数の1のことでしょうか。Boucherの本格的研究を皮切りに、蓋然性の論理学の構想をライプニッツの内的発展において明らかにする作業がこれからなされそうなので、期待大です。