labyrinthus imaginationis

想像力ノ迷宮ヘヨウコソ…。池田真治のブログです。日々の研究のよどみ、そこに浮かぶ泡沫を垂れ流し。

朝、解析研。
『解析入門I』V, 4,無限交代級数についての定理およびアーベルの定理のところ。前者の一般化が後者になっているようだが、確かにO氏が注目したように、このギャップはすごいなあ。
やばい、解析おもしろい!仕事が手に付かないでおじゃる!
そんなところに公募の件でメールが……。
ぐおお。
おお、神よ、どうか、私に数学する暇をお与えください。そしたら信じます。

昼、解析学史。アーベルの定理の系譜が少し気になったので、下記図書の関連箇所を読んだ。

U.ボタチーニ,『解析学の歴史 オイラーからワイアストラスへ』(好田順治訳),現代数学社,1990年。

直訳調だが、訳のところどころで意味がとれないところがあり、もう少し訳をこなせなかったかなと悔やまれる。英訳版からの二度焼き翻訳になっていることを考えると、ちょっと信用度が低い気がする。しかし、だいたいどのようなことが書いてあるのかがわかる点で邦訳はありがたい。

詳しくは知らないが、アーベルは、ガロアと並ぶ薄幸短命な天才数学者の代表格として良く知られているけど、おそらく解析の厳密化の神様のような人である。

その中に、アーベルの手紙が引用されているのだが、彼による人物評がおもしろい。それをまとめると、

  • ディリクレ…非常に鋭い数学者。
  • ルジャンドル…極端にやさしい人だが、不幸にも「石のように年老いている」。
  • コーシー…気違いのよう。彼と一緒に仕事をすることは何もない。仕事は優れているが、混乱したやり方で書いている。

コーシーについてはずいぶん辛辣であるが、アーベルほどコーシーの著作を丹念に読んだものもいなかっただろうから、そう言うのであろう。めちゃめちゃ原文が読みたくなってきた。何語かな?フランス語だったら翻訳しますよ。

ボタチーニの力点は、アーベルの定理には一様収束の概念はまだ現れない、というところにあるようだ。

グラタン・ギネスの関数解析の著書も少しだけ参照してみた。こちらの方はより数学的で簡潔な感じであるが、概念的説明が少ない。「アーベルのテスト」や「ディリクレのテスト」という言い方は、ジョルダンの『解析教程』(Cours d'Analyse)によるらしい(p.137f)。

リーマンのRearrengement Theoremとの関係は、「アーベル関数論」Theorie der Abel'schen Funktionenで論文を書いているので、おそらくそれをみれば何かわかるだろう。
そう言えば、杉浦先生は『リーマン論文集』の訳業にも関わっておられる。

ここら辺の解析学史に関して、近年出版された良い本は何だろうか。

Hans Niels Jahnke (ed.), A History of Analysis, AMS, 2003.

あたりだろうか。これぞ、というのがあれば、読みたいな(遠い目)。

副研究として、デカルト以降〜20世紀初頭までの解析学史をちょっと考えておこう。わりと本気で。