labyrinthus imaginationis

想像力ノ迷宮ヘヨウコソ…。池田真治のブログです。日々の研究のよどみ、そこに浮かぶ泡沫を垂れ流し。

SUSHI SHOPの教訓。

午後4時、電球を点けた途端、「ボンッ」と音がして、電球が切れ、ヒューズが飛んだ。もう暗くなりかけていて、部屋で研究はできそうにない。あいにくの土曜日で、しかも休暇中ということもあり、管理人は不在。住人に相談するも処方が分からず、用務担当を訪ねるも気配なし。肝心のヒューズの場所が特定できない。出不精の自分にはこれもいい機会だと思って、外出して映画でも観ることにする。トラブルにあったときは、最善の方策を考えるのも大事だが、根拠は無くとも楽観的になることが大事だ。海外での生活には、最低限非文化的なタフさが要る。
観たのは「アバターavatar」。いかにもなハリウッド調に最初は好きになれず、パクリっぽいしこれはくだらんぞ、失敗したと思って、映画館を今にも出そうになった。けれども、我慢したかいあって、アバターに入ってからの中盤以降の展開が見事。CGにも圧倒され、これはひょっとすると面白いしすごいんではないかと思ってしまった。伏線もうまいこと回収している。しばらくしてくると、あの変な異人さんにも慣れてきて、しまいにはちょっと萌えてきてしまったもんだから、困ったものだ。たしかに、何かいろいろ混ぜ込んでいるなという印象は否めない。宮崎駿の作品をいろいろ合わせている感じ。まあ、それが単なるパッチワークに留まらず、美味いカクテルにまでなっているということが重要だ。相変わらずの勧善懲悪っぷりはさすがにうんざりだが、いろいろ問題を含んでいる作品ではある。最後は予想通りの展開だったが、うまいことまとめたという感じはする。フランスでは恒例の拍手が起きたから、びっくりした。失笑してしまうところも多かったけど、なかなか楽しめた。CGもここまできたかぁ、という素朴な感想が大半を占める。もはやお金さえかければ、ファンタジー作品の多くが映画館でリアルに再現されるのかもしれない。
夕食は、日本恋しくなって、SUSHI SHOPに初めて入店。おしぼりが出てこないのは、まあ仕方ないとしよう。飲み物は?というから、お茶はありますか、と尋ねると(こう尋ねざるを得ない時点ですでにアウトなのだが)、悲しい哉、「ない」とのたまう。マジですか。がっかりである。「え、なんで?お茶はお寿司と見事に適合するのに、信じられない。。。まったく驚きだね!extraordinaireだね!」と思わず皮肉を言ってしまった。がっつり通じたようで、店員のお姉さん、少し冷たくなった。ごめんなさい。わかる。フランス向けにアダプトされていて、フランス人も気軽に入れるし、そういう風になってしまうのはわかる。日本だって、実際そういうのが溢れているから。オーナーは当然フランス人か何かだろう。ただ、日本人ぽい人が厨房で働いていたのを見て、一層がっかりしてしまった。自分だったら、余程の理由がない限り、恥ずかしくて働けないだろう。味は自分の舌にとっては普通においしかった。とはいえ、巻き寿司がのりできちんと閉じられておらず、ごはんがこぼれて見えてしまっていたし、日本ではきっと店に出すことは許されない水準だろう。日本の心はそこには見出せず、日本料理とは言えない。
視点を変えれば、日本の西洋の受容も、それと類似する印象を今でも西洋人から持たれているのかもしれない。自分も日本から西洋に学びに来ているものとして、今回のSUSHI SHOPのようなことにだけはならないぞ、と心に誓った次第である。むろん、良いSUSHI SHOPもあるに違いない。たまたま、こういうSUSHI SHOPがあったというだけのことだと思う。ただ、軽蔑されるような類の模倣は、やはりどこか根底的なところで間違っているのだと思う。ともかく、お茶がないのには心底がっかりしたし、日本文化へのレスペが、こちらは微塵も感じられなかった。代わりに飲んだキリン・ビールは、本物だったと信じたい。また皮肉を言ってしまった。自重、自重。
帰ってもできることがないので、アイリッシュ・パブに行って時間を潰す。そこに行くのは初めてだったが、居心地は悪くなかった。バーやディスコも、土曜日は学生の客も多いので比較的安全だし楽しいと思う。たまにはハメを外してみるのも、悪くないかもしれない、経験として。