クラヴィウスに関する包括的な数学史研究
曽我昇平氏の博士論文、「クリストファー・クラヴィウス研究―イエズス会の『学事規定』と教科書の史的分析―」が、国立国会図書館デジタルアーカイブから閲覧・ダウンロードできることに、先ほど気がつきました。
まだ要旨を読んだのみですが、これまで欠けていた中世の視点とりわけイエズス会派の視点、教育的影響、そして漢訳を通じた中国算術への影響も踏まえた、クラヴィウスに関する包括的な数学史研究です。日本でこのようなクラヴィウス研究が出されるのは、初めてなのではないでしょうか。
数学史・科学史研究者だけでなく、日本のデカルト研究者や近世哲学史研究者にとっても、今後必読となる、貴重な研究と言えそうです。これまでもっぱらデカルトや近代数学革命の視点からクラヴィウスが評価されがちでしたが、そうした哲学史観や数学史観に反省を迫るものになりそうです。
哲学史研究者としての課題は、こうした歴史学的アプローチの浸透を、どのように真摯に受け止めて、哲学史の意義を今後確保していくのか、ということになりそうです。