labyrinthus imaginationis

想像力ノ迷宮ヘヨウコソ…。池田真治のブログです。日々の研究のよどみ、そこに浮かぶ泡沫を垂れ流し。

次の研究課題。

今日から新年度。いろいろなことが終わり、いろいろなことが始まって行く日だ。形式的には。しかし、形式が実質を伴うときもある。

友人や知人の朗報を、いくつか間接的に聞く。たいへん悦ばしい。反面、依然として人文科学・哲学への将来的に明るい展望は、現状では見えてこない。目先の不安を見る賢くて優秀な人材ほど大学を去っていく。
せめて何か研究面で明るい話題を提供できればいいのだが、研究に時間と労力を十分つぎ込めない自分の力では現状を打破できず、その位置にまだ立ててすらいない。ここ数年は、ただいたずらに齢だけを重ねてゆく絶望感がある。

ここのところずっと忙しくてすっかり忘れていたが、更新を停止しているツィッターを覗いているうちに、今日は科研費の交付内定があるということを思い出す。
いつのまにか、桜も咲いちゃっているし。

前回採択された若手Bは、自己評価としては未だめぼしい研究成果もないまま、昨日をもって期間が満了。今年から40代に突入してしまったので、昨年10月にあった科研費の公募には、基盤Cで応募した。これで公式に、もはや「若手」ではない。いろいろと言い訳のきかない年齢になってしまったし、もっとしっかりしないといけないのだが、スーツを着ようが、ヒゲを生やそうが、いまだに学生と間違えられてしまう。何かが根本的に足りない気がしている。

応募した研究課題は、「抽象の問題を軸とした初期近代における数学と哲学の相互交流に関する数理哲学史的研究」。3年で成果を出すには自信がなく、4年はちょっと中途半端だし、きちんと成果を上げるための十分な余裕が欲しいので、期間は5年間で応募した。申請額の満額で採択されることはなく減額して採択されるので、申請額はMaxで応募した。

課題の性質上、競合相手がおそらくいないせいか、今回も無事採択された。評価いただいた審査員に感謝したい。申請書の作成には、思ったより時間がかかった。しかし十分練ったので、なぜか通過するという確信をもって出せた。直接経費は申請額の7割。間接経費を合わせた全体だと、申請額の9割強。国際シンポの計画も盛り込んでいるので、その際はどこか別のところから予算をとってくる必要がありそうだ。

ほっとしたような気もするが、またしばらく忙しくなるし、現代的な研究への移行はまたしばらくお預けかと思うと、安堵してもしょうがない。研究しようとするものにとっては、基盤Cは通過して当たり前らしい。実際、通過しないと大学の運営交付金からいただいている教育研究費からは、海外出張すらままならない。今年度は教育研究費がまた大幅に減額されるとすでに通知されている。コースで契約している雑誌などを解除していかなければ、教育に回す経費も十分に捻出できなさそうな状況だ。

これで通らなかったら、しばらくライプニッツや近世哲学の研究からは離れて、基礎を磨くべく、数学と語学の勉強に引きこもり、やりたいと考えている数学の哲学や歴史の研究に没頭しよう、と考えていた(落ちたときの予防線かも)。落選を同時に期待することで、採択はわりとどうでもよいというところまできて、そして科研費のことをいつしか忘れた。

とにかく、やりたい研究をやるという楽しみがすべてであり、それに尽きる。
今年度以降も、研究・教育・学務そして人生をいかにして両立していくべきか、いろいろストレスを抱えながら生きていくのだろうが、そうした中でいかに高いモチベーションを維持して、研究を継続していくかが問われるだろう。

自分のやりたい研究をみつけられたら、全力で遊ぶべきだろう。全力で遊べる研究をみつけられたら、研究者になるべきだろう。研究者になれれば、自分のやりたい研究ができるだろう。そのように思わせることのできる、知的に豊かな文化を尊重する社会であってほしい。